第6章 凌辱 ~前編~
目が覚めると、私はいつも通り、自室のベッドの上だった。いつもと変わりのない朝。普段通りの朝。ベッドの上の私は、パジャマに掛布団。それで……、って、あれ……?
「……!」
ガバッと勢いよく、私は上体を起こす。
やっぱりパジャマはきちんと着ているし、特に変わった様子もない。
「……。ハァ……。」
やっぱり、昨日のアレは夢だったんだろう。よりにもよって、悪魔であるセバスチャンが出てくる、エッチな夢をみるなんて……。私の欲求不満って、実は結構深刻なレベルなんじゃないだろうか……。そんなこと、想像したことも無かったのに……。まぁいいや。とにかく、服を着替えて、テレビでも観ようかな。そう思って、パジャマを脱いで、キャミソールを一旦脱ぐ。
「……! 夢じゃ……、ない……?」
私の乳房と乳房の間、心臓の上には、夢で見た……ううん、セバスチャンが見せてくれた手の模様と同じものが、しっかりとあった。『契約書』だ。触ってみても、擦ってみても、消えることは無い。まるで、私の体にずっと刻まれていたかのように、そこにあった。
ブラジャーを付けて、再びキャミソールを着る。そして、パジャマから普段着へと着替える。
――――コン、コン、コン。
タイミングよく、私の部屋の扉がノックされた。間違いなくセバスチャンだ。どうしよう。夢じゃないのなら、尚更どんな顔をして顔を合わせれば良いのか……。どうしようどうしようどうしよう……!隠れるのも変だし、顔を合わせないのも変だし……!
「よろしいですか?」
「は、はい!大丈夫です!!」
……。なんで敬語なんだろ……。自分でも分からない……。
「朝食の御用意が出来ましたよ。」
「は、はぁい……!」
適当に髪をとかして、リビングへと急ぐ。入室しなかったのは、セバスチャンなりの配慮なのだろうか。分からないけれど、もうそこまで考えているだけの精神的余裕が、私には無い。