第5章 鳥籠
***
「っ、はぁ……、はぁ……、あ、ちょ、待っ……!ひ、んっ……!」
私は、何も“鎮まって”なんていない。むしろ、さらに興奮している。与えられる快感に溺れている。性感帯を愛撫され、口付けをされれば、あとはもう、堕ちてゆくだけだ。セバスチャンは、ほとんど息も乱さずに、ついでに服も乱さず、私だけが何もかも乱れている。
「ひゃぁんっ、ふ、ま、……、セバス……、チャ、ん……っ……!」
火照ってゆく躰に、のぼせ上がっていく意識。セバスチャンの指が私の内側を撫で上げるたびに、私はその快楽に溺れ死にそうになる。
……、ふと、あの男のことを思い出した。けれど、セバスチャンに与えられる悦楽が、波のように押し寄せてきて、結局何ということも思い出せないままに、私は喘ぎ声を上げた。
「どうされましたか?今、別のことをお考えだったでしょう?」
「……、ひゃ、ん……!?」
セバスチャンは、冷静沈着なままで、滑らかに言葉を紡いている。
「お嬢様の様子を見ていれば、分かりますよ。」
セバスチャンは、ふっと、呆れたように笑った。
私は、もう余計なことを考えないように、軽く頭を振った。そうだ。今、私の目の前にいるのは、セバスチャンだ。死んだ……、いや、殺した人間のことをあれこれと考えていても、何にもならない。無益なことだ。
「ん……、何でも、ない……。……、それ、……より……。」
私は、セバスチャンの首に手を回して、セバスチャンをぐっと引き寄せた。そして、そのままセバスチャンの唇に、自分のそれを重ねた。セバスチャンは、少し驚いたようだったけれど、すぐにそれを受け入れてくれた。
愛撫が激しくなり、私の躰は、ビクンビクンと痙攣して、私の意識はそのまま薄れていった。それが、肉体的な快感とはまた別の次元で、心地良かった。