第4章 殺人
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タクシーがすぐにつかまり、私とセバスチャンは、あっという間に自宅へ戻ることができた。
「お疲れさまでした。すぐに、湯浴み――――ではなく、入浴の用意を致しましょう。」
「あ、ありがとう……。」
とは言え、下着類までセバスチャンに用意してもらうのは何だか申し訳ないし、気恥ずかしいような感じがするので、体調が回復してからは自分で用意している。まぁ、これぐらいは当たり前なんだけど。
流石最新式のユニットバス。お湯もすぐに出てくる。以前にひとりで暮らしていた部屋に、お情けのように付いていた小さな設備とは大違いだ。
熱めのお湯に入れば、全身の力が程良く抜けていく。同時に、私の頭は、さっきまでの紅を思い返していた。
死んだ。人間が、2人。
セバスチャンが、殺した。
私が、殺せと言った。
私が、メチャクチャに殺せと、言った。
呆気ないものだった。
あれほどまでに、人間はあっさりと死ぬものなのか。
一瞬だった。
瞬く間に、人間がただの紅になった。
ただ、インクか、絵の具のように、広がった紅。
「――――――。」
―――――勿体無い。
私の胸に飛来したのは、そんな感想だった。
どうせ殺すのなら、もっと、楽しんでからがいいと、そう思った。
どうせ殺すのなら、もっと、その過程を楽しむのがいいと、そう思った。
「――――――――っ……。」
例えば、こんなのは、どうか。
殺す相手を、少しずついたぶって……、もう楽しめなくなってから――――――味のしなくなったガムを吐き捨てるようにして殺すのが良いのではないかと、そう思った。