第4章 殺人
ふと、その過程を想像してみる。
例えば、そう。女なら、“ココ”を、グチャグチャにしてから―――――。
私は、自分の秘所に、指を宛がった。思えば、“こんな行為”は、随分と久しぶりな気がする。最後に“これ”をしたときのことなんて、遥か昔のように思い出せない。
「はぁ……、はぁっ……、はぁ……っ……。」
どうやら、私は興奮しているらしい。私の頭の中では、小さなシミュレーションが展開されていた。女を、嬲るのだ。意識のある女を、指の先から、小さな刃物で傷付けていくのだ。大きな刃物では駄目だ。相手の戦慄、恐怖こそが、きっと私の感情を揺さぶる筈。指の先から、腕、胸へと進めて……、そう。“女”じゃなくしていく。どんな反応をするだろうか?そこまでは、まだ私の想像が及ばない。それでも、私は確実に興奮している。
「はぁ……、はぁっ……、はぁ……んっ……!」
久しぶりの“刺激”に興奮しているのか、それとも、今私の脳内で繰り広げられている“想像”に興奮しているのか。どちらなのかは、自分でも分からない。ただ、この興奮は、きっとすぐには醒めない。あぁ、でも、残念。これ以上お風呂で居たら、私はきっとのぼせてしまう。
名残惜しいけれど、入浴を終える。髪を乾かして、一旦リビングへ足を進めた。セバスチャンは、片付けを終えたのか、何かの本を読んでいた。分厚い洋書で、私には表紙のタイトルすら読めなかった。
「……ふむ。お嬢様。随分とお顔が赤いですが、のぼせてしまいましたか?水でもお持ちしましょうか?」
セバスチャンが、リビングのテーブルに本を置いて立ち上がった。ううん、大丈夫。水なんて、欲しくない。でも、私はもうそんなことも言葉に出来ずに、代わりにセバスチャンの腕を掴んでいた。
「ちょっと、“興奮”してるだけ……。大丈夫。」
当然、俯いたままで、セバスチャンの顔なんて見られない。それでも、きっと今、セバスチャンは笑っている。きっと、良くない顔で笑っている。