第4章 殺人
「―――――して。」
見なくても分かる。悪魔の、紅茶色の瞳が、私を捕らえている。
「あいつらを、殺して――――――!!!!!」
「イエス―――――」
セバスチャンの声が私の耳に届くころには、セバスチャンはこの部屋から姿を消していた。
『お嬢様――――』
スクリーンに付属しているスピーカーから、セバスチャンの声が聞こえる。セバスチャンは、この一瞬の間に、306号室へ移動したらしい。いや、そんなことはどうだっていい。
「その女と、茨木翔を―――――――、殺して!!!!!! メチャクチャに!!!!!!!!」
そう叫ぶと同時に、私の全身から力が抜けて、私はスクリーンの前に座り込んでしまった。
画面は、大部分が紅く染まった。ぐしゃり、という不気味な音が聞こえただけで、あとは何も聞こえなかった。
『これで、よろしいでしょうか――――?』
セバスチャンはスクリーン越しに、不敵な笑みをこちらへと向けている。私へと視線を送るセバスチャンの向こうは、ただひたすらに紅かった。一面の紅。その“紅”は、“かつて人間であったモノ”らしい。私の頭は、ぼんやりとそんなことを考えていた。
どうやらこれで、茨木翔は死んだらしい。