第4章 殺人
「うん。じゃあ、それでお願い。」
私がそう言うやいなや、セバスチャンの姿が、ここ305号室から消えた。
セバスチャンが消えた瞬間、先程までは何も映っていなかったスクリーンに、映像が映し出され始めた。ベッドの上で、男性と女性が、腰掛けている。嗚呼、分かる。分かるって。これは、茨木翔だ。あの男だ。その横には、見知らぬ女性がいる。少なくとも、私の知人ではない女だった。
数秒間、画像がブレて不安定だったが、それもすぐに安定した。音声もクリアに入るようになった。
「戻りました。」
部屋のドアから、セバスチャンが戻って来た。
「この男性で、間違いありませんね?横の女性は……。どなたでしょう。恋人でしょうか。」
「……。うん。間違いない。茨木翔。横の女は……、知らない。」
スクリーンでは、茨木翔と知らない女性が絡み合い始めている。
『――――今夜、君と過ごせて嬉しいよ。』
『――――素直で、可愛いね。』
最初、茨木は聞こえの良い甘い言葉を、その甘い声で口にしていた。私は、ただそれを、遠い昔のように、或いは昨日のことのように思い出しながら、ぼんやりとスクリーンを眺めていた。セバスチャンは、何を考えているかよく分からなかったけれど、無表情でスクリーンを見つめていた。