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ゆりかご 【黒執事 R18‐G】

第4章 殺人


***


 タクシーの中で、私はあの男の画像を、セバスチャンに見せた。セバスチャンは、特に興味も無さそうだったが、しばらくその画像を見つめていた。恐らく、完全に記憶するためだろう。
「覚えた?」
「はい。数千人から数万人程度でしたら、人ごみの中でも、比較的簡単に見つけられると思いますよ。」
 出てきたのは、とてつもなく頼もしい返事だった。よく分からないが、『悪魔』は、知的にも長けているのだろうか。少なくとも、私とは比べ物にならないぐらいに頭が良いということぐらいは、分かるのだけれど。でも、それだって、本来の能力のうち、僅かしか出していない可能性もある。そう思うと、底が知れない。まぁ、今はその「底が知れない」存在が、味方で居てくれているので、これ以上のことは考える必要も無いのかもしれないが。


 さて、今は、セバスチャンよりもあの男だ。この時間なら、アイツはまだ帰宅していない可能性が高い。今までの行動パターンが変わっていないのなら、金曜日という事も考え合わせるなら、確実に繁華街にいる。その中でも可能性が高いのが、職場の人間はほとんど足を運ばない、A市の繁華街。金曜ということもあり、なかなかすごい混雑で、私ひとりでは、アイツの姿を見つけることすら不可能だろうが、こちらにはセバスチャンがいる。ATMの件もあるのだ。セバスチャンは、事も無げにあの男を見つけ出してくれることだろう。

「もうすぐ、目的地に着きますよ。」
 タクシーの運転手がそう教えてくれて、お金を払って、タクシーを降りる。これ以上は、車での侵入は難しいと言われてしまったためだ。
「それじゃあ、セバスチャン。あの男を探してきて。いなかったら、すぐに戻ってきて。私は、そこの喫茶店で待ってるから。」
 A市は、お世辞にも治安が良い方ではない。非力な私が、外にひとりでいるのは危険だ。セバスチャンは、私が喫茶店のテーブルにつくのを見届けるとすぐに、姿を消した。さて、お手並み拝見と行きますか。私は、腕時計を見ながら、注文した飲み物に口を付けた。



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