第1章 契約 ~前編~
「ん……、あんっ、は、あん……、っ……!」
ぴちゃり、ぴちゃりと、厭らしい水音が響く。迫ってくる快楽に、私は成す術もない。でも、それでも構わない。翔くんが与えてくれる快感に、私はひたすらに身を委ね続ける。
「あ……、はぁ……、はぁ……!っぅ……、カワイイ、カワイイよ、キリエ……!」
翔くんは、私のナカに自身を埋(うず)めながら、私の事を何度も何度も、「カワイイ」と言ってくれる。普段、職場では「鈍くさい」だとか「鬱陶しい」だとかしか言われない私。だから、そうやって言ってくれるなら、それがたとえ嘘であったとしても、嬉しくて、嬉しくて。
「あ、っ、ぅ……、あんっ、あ、も、もぉ……、イっちゃぁ……、イっちゃぁん……ッ!」
真っ白になっていく私の頭。でも、この感覚は嫌いじゃない。むしろ、普通にしてる時って、心配事とか、悩みとか、そんなものがいつも頭の中をぐるぐると回り続けている。それが、こうしてセックスしている時には、それらが全て白紙になるのだ。それも、ただ白紙になるだけじゃない。快感が、波のように押し寄せてきて、ゴミ屑のような私の思考をすべてさらってくれるようで。それでいて、私の足りないものを、翔くんに与えてもらっている、そんな感じ。
律動が、激しくなる。私は、膣内で、翔くんのモノを、これ以上ないぐらいに感じていた。
「あ……、あんっ、……あんっ、……あんッ……!」
一定のリズムで刻まれる快感。翔くんも、小さく「イく……!」と呟いて、ゴム越しに熱を吐き出した。翔くんは、私の膣内から、ずるりと自身を抜き取った。その瞬間、私は空虚に戻る。今まで足りないモノを、せっかく翔くんに埋(う)めてもらっていたのに、それがなくなって、寂しささえ覚えてしまう。それに、また、このお休みが終わったら、ツライ現実に戻らなきゃいけない。そんな思考が、私の頭の中に、また回り始める。
「ね……、翔くん……。」
そうなったら最後、私は翔くんに、こう言うしかない。
「何でもするから……、もうちょっと、だけ……。」