第3章 快復
「そろそろ、不動産屋へ行く時間では?」
セバスチャンが、まるで執事のように、私に話し掛けてくる。
「あ。そうだったね。買い物してて、抜けてたよ。ありがとう、セバスチャン。」
そんな会話をしながら、私とセバスチャンは不動産屋へ入り、次に住む賃貸マンションの契約を済ませた。
その数日後には、私とセバスチャンは新しいマンションに住んでいた。今度は、あの狭苦しいワンルームマンションとは大違いの、部屋が4つもある住まいだった。ひとつひとつの部屋が、以前の私の部屋よりも大きい。それだけでも、私は嬉しかった。1番広い部屋はリビングで、その次に広い部屋は、それぞれ私とセバスチャンの私室。残りの1つは、取り敢えず物置にしておいた。贅沢な収納スペース、といったところだ。私とセバスチャン、それぞれの私室には、大きめのベッドも入れた。セバスチャンは、別に何を欲しがるという事も無かったので、部屋は無機質なほどにシンプルだった。それでも、さすがにどうかと思って、私が勝手にカーテンやらデスクなりを入れておいたが。セバスチャン曰く、彼は特定の物にこだわるタイプではないようで、自室に対するこだわりも無いとのことだった。それどころか、人間の作るガラクタには興味が無いと、ハッキリと言ってのけた。まぁ、いくら見た目が美青年でも、中身は『悪魔』なのだから、そうなのかもしれない。