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ゆりかご 【黒執事 R18‐G】

第11章 羽化





「……。」
 タクシーに乗り込んで数十分。私は、元いた職場の建物近くにある、喫茶店にいる。喫茶店と言っても、ビルの中にテナントとして入っているタイプの喫茶店で、その職場を少し離れた場所から眺めることができる位置にある。

「~~~♪ ~~~♪」
 私の端末が鳴る。勿論、セバスチャンからのコールだ。
「はい、もしもし。」
『お嬢様、いつでも大丈夫ですよ。封鎖は完了しましたので、いつでも、お嬢様の指示で建物を地獄にできますよ。』
「……へぇ?」
 私は、口元にだけ笑みを浮かべて、相槌を打った。
『えぇ。防火用スプリンクラーからは、ガソリンが撒き散らされるように改造しておきましたし、窓はどれひとつとして、開かないように細工させていただきました。あとは、起爆させるだけです。』
 相変わらず、見事な手際だ。そして、悪辣な手段だ。私だったらば、そこまでは考えつかない。悪魔は、やはり考えることが違うのだろうか。
『これなら、どこへ逃げ込んだとしても……、たとえその身が炎に晒されずとも、一酸化炭素中毒で、間違いなく死に至るでしょう。』
「うん。じゃあ、3、2、1……」
 私は、カウントを取った。1、と言った1秒後、ドン、と地響きがした。それなりには離れているはずのここにいても伝わるということは、よほどの威力だろう。
 やや離れて見える、黒い煙。まるで、私の心象を写しだしているようだと思った。
 ややあって見え始めた、赤い炎。ガソリン入りのスプリンクラーが作動したのか、時折、爆発じみた炎上をも見せている。
 炎は、勢いが弱まるどころか、ますます勢いを増している。

 私はその光景を、適当に紅茶を飲みながら、眺めていた。



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