第1章 契約 ~前編~
「あ、もうお昼終わっちゃう。行こ。」
「うん。」
「写メ、送っといてよぉ~?」
「アハハ、了解!」
遠のく足音。
これが、彼女たちとの最期の別れになるのか。そう考えたところで、私には何の感慨も湧かない。
私は、鉛のように重い体を引きずって、トイレの個室から出た。頭痛と吐き気は収まらない。トイレから出るときには、ふらついて、扉に頭を打った。衝撃は感じたが、痛みは無い。それが妙に不気味だったけれど、それよりも、一刻も早く此処を出たい。
ゆっくりと、職場を後にする。さて、死ぬと決めたものの、特に明確な計画があったわけでもない私は、もうすっかり働きの悪くなっている自分の脳で、一から自殺方法を考えなくてはならなかった。
テレビで、樹海から死体が発見されたというニュースが流れていたのをふと思い出したけれど、この近辺に樹海なんてない。練炭自殺した人の死体がどうのこうのなんて話も、どこかで聞いたことがあるけれど、練炭自殺の方法もよく分からない。それかオーソドックスに、包丁か何かで胸を突き刺そうか……。あぁ、でも、痛そうだなぁ……。それに、結構な時間のたうち回るとか、すぐに死ねないらしいとか、聞いたことあるし……。私、死ぬ時まで、散々に苦しんで死ぬのかぁ……。そんなのって、やっぱり惨めだ……。死にたい。けれど、これ以上苦しむのは、やっぱり怖い……。それに、なんで、私、ばっかりが、こんな……。