第10章 拷問 ~後編~
「……しろ、もと……?」
矢田夏雄は、私など目に入らないと言った具合で、私の後方に繋がれている美沙ちゃんを、愕然としたままで見つめた。
「はい。美沙ちゃんですよ? まぁ、今は矢田部長の不倫相手じゃなくて、私の可愛いペットですけど。餌だって、床に這いつくばって犬食いで食べるんですよ?」
矢田夏雄に、私の声など聞こえているかは謎だが、それでも私は言葉を続ける。
「こぉんなにカワイイ美沙ちゃんなのに、部長的にはもう『面倒』で『潮時』なんでしょ? それじゃあ、美沙ちゃんのお腹にいる、矢田部長さんとの赤ちゃんごと、私が処分してあげますね。仕事がよくできる部下を、褒めてください、ね?」
私はそう言って、美沙ちゃんに、数発の蹴りを入れた。みっともなく地面に転がった美沙ちゃんを仰向きにさせて、下腹部を全力で踏みつけた。
「う゛……ッ! あ゛あ゛…………!!」
美沙ちゃんは、ひたすら、轢き潰された蛙(かえる)のような声を出し続けている。もう少し、色気のある声は出ないのだろうか……とツッコミを入れたい気分だった。そんな声じゃ、私も興奮しづらいと言うか……。でも、確実にアソコは濡れそぼっている。私は、とうとう犬にまで興奮できるようになってきたらしい。それはそれで滑稽なのかもしれないけれど、もうどうだっていい。
「さぁ美沙ちゃん。去勢手術をしましょう。もう、お外で他の雄犬に交尾されても大丈夫なように……!」
私はそう言って、鞄からナイフを取り出した。
セバスチャンは、その様子を、感情のない紅茶色の瞳で見つめている。
「ちょっと、チクッとしますよ~!」
言いながら私は、美沙ちゃんの下腹部に、ナイフを思いっ切り振り下ろした。
ドン、と鈍い感触がして、ナイフが美沙ちゃんの下腹部にめり込む。
「う゛……! ぎ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
私は素早く、ナイフを抜き取る。そして、同じ箇所を数回にわたって連続で刺した。
美沙ちゃんは、全身がビクンビクンと痙攣して、やがて力が抜けたようになった。