第10章 拷問 ~後編~
「……。」
セバスチャンが、何も言わず、私をじっと見ていることに、ふと気が付いた。
「どうしたの? セバスチャン……。」
セバスチャンが、何も言わず、意味ありげな視線を送ってくるなんて、今までにあっただろうか。あったのかもしれないけれど、それは、珍しいことのような気がする。
「いえ。何も……。」
そう言って、セバスチャンは、すうっと目を細めた。なんだろう、この感じ。背中が、ゾクリとした。悪寒が走る、という感じに、近いかもしれない。恐怖とも違う、不快感とも違う、不思議な感覚。まぁいい。私はあと少しで、セバスチャンに魂を食べられるだけの存在なのだから。
「明日は、感動の再開だね。私も、楽しみで楽しみで……!」
そう。私に残されているのは、この刹那的で、深く激しい快楽を得ることだけ。残り滓まで、味わってやるんだから。
私は帰りの車の中、そんなことを考えていた。