第10章 拷問 ~後編~
「さて、セバスチャン? あの、間抜けな部長の家は、どうなったの?」
私は、わざと美沙ちゃんの前で、大きな声で話題を振った。
「あぁ、矢田さんご一家のことですね。」
『矢田』という名前に、美沙ちゃんがビクッと反応した。私は当然、気付かないふりで、話を進める。
「奥様の矢田喜美江さんは、息子を亡くし、気が狂ったようになり、今は入院しています。夫の矢田夏雄さんには、こちらの……、美沙さんの画像を送り付けておきましたので、明日には来るのではないかと思いますね。来なければ殺害すると、付け加えておきましたから。」
「セバスチャン、最高!!」
私は、歓喜に震えた。
「や……! なんて……!? わたし、そん、な……!?」
美沙ちゃんは、カレーで口をべちゃべちゃにしながらも、顔を上げた。
「なに? どうしたの? 美沙ちゃん?」
あくまでもわざとらしく、美沙ちゃんに顔を向けた。
「やめて……! 殺さないで……!!」
美沙ちゃんは、私に、懇願の声を浴びせた。あーあ、まったくもう。躾が足りなかった?
私は美沙ちゃんに、容赦なく鞭を数発、お見舞いした。
「殺さないで“ください”、“ご主人様”でしょう……!?」
「あ……。こ、殺さないで、ください……。ご主人様……。」
美沙ちゃんの顔は、カレーだらけの間抜け面とは裏腹に、必死だ。コレは、何かある。そう思っただけで、私の胸は期待に膨らんだ。
「お願い、します……! ご主人様……! お願いだから、殺さないで、く、ください……!」
えらく必死だ。
「何で? 理由は?」
私は、平静を気取って訊き返す。
「その、わたし……、おなかに、その……!」
私は、興奮で気が狂いそうだった。いや、頭の中の回路が、もう出鱈目に弾けたような気さえした。
「赤ちゃんが……、お腹に、赤ちゃんが、いる、の……! 部長との、その……!」