第10章 拷問 ~後編~
「ふふふ!」
私は思い付きで、美沙ちゃんがむしゃぶりついていた使い捨て容器を、美沙ちゃんの届かないところへ、移動させてやった。
美沙ちゃんは顔を上げたけれど、口の周りをカレーだらけにして、何とも不格好だった。せっかく綺麗な、桜色の唇も、こうなってしまえば、元も子もない。それでも、そんなことはお構いなしとでもいった具合に、口を開いた。
「ご主人様……、ください……。私に、餌を、ください……!」
最後の方は、涙でその瞳を潤ませて、懇願してきた。目だけを見れば、こんなにも色っぽいのに、口まわりのカレーが、全てを台無しにしている。その対比が何とも滑稽で、さらに笑えた。
「あははははははははは! なんて惨め! バカみたい! この、犬畜生!!」
私はそう言いながら、使い捨て容器を舐めるようにして食事をする美沙ちゃんの頭を、踏んづけた。
「ぶっ……!!?」
美沙ちゃんは、私に頭を踏まれて、使い捨て容器に顔面を突っ込みながらも、食事を続行している。その浅ましさに、私の心は撫でられていくようだった。
「これからは、ご主人様に絶対服従。いい?」
「は、はい……、ご主人さまぁ……っ……。」
美沙ちゃんは、頭を踏まれたままで、使い捨て容器から顔を上げて返事をした。案外、ちょろいものだと思った。
「随分と、イイ光景ですね、お嬢様?」
セバスチャンは、その笑みを深めながら、呟いた。
「ふふ。でしょう? セバスチャン、この犬、犯してみる? お好きにどうぞ?」
私は、試すような視線を、セバスチャンへと投げかける。
「ご冗談を。犬とまぐわう趣味など、私にはありませんから。」
辺りには、美沙ちゃんが使い捨て容器を舐める、ぴちゃぴちゃという音だけが響いていた。