第10章 拷問 ~後編~
「ぁ……! まっ……!」
美沙ちゃんが、瞳に涙を溜めながら、私へと言葉を発した。歓喜の瞬間だ。私はもう、これから見られるであろう光景を想像しては、気が狂いそうだった。
「どうしたの?」
わざとらしく、私は美沙ちゃんに言葉を返す。
「……まっ……て……。」
それは、今にも消え入りそうな声で。
「何? 聞こえないんだけど……。」
「待って……!」
美沙ちゃんは、絞り出すようにして、言葉を紡いだ。
「え……? どうしたの……?」
私は、わざとらしく、訊き返す。
「待って、ったら……!」
私のアソコは、これから起こることを想像して、密かに湿り気を帯び始めていた。でも、そんなことはおくびにも出さないようにしながら、会話を続ける。
「なに? 美沙ちゃんは、こんな餌、気に入らないんでしょ? 食べないんでしょ?」
言いながら、私は、今しがた注いだばかりのシチューを、持ってきていたゴミ袋にブチ込んだ。
「あ……!」
美沙ちゃんは、心底悲しそうな顔をしていた。あれはもう、堕ちる……! 私の背筋は、歓喜にゾクゾクとした。
「どうしたの? 変な美沙ちゃん……。 言いたいことがあるなら、遠慮しなくていいんだよ……? ただし、私はご主人様だから、ちゃあんと、『ご主人様』って、呼んでね……?」
「ご、ご主人様……。わた、わたし、に……、食事、を……!」
私は、口角が吊り上がるのを、止められなかった。いや、別に、止めようとなんて思っていないのだけれど。
私は、興奮のあまり、鞄から鞭を取り出して、美沙ちゃんに一発、打ちつけた。
パァン、と乾いた音が鳴り、顔を打たれた美沙ちゃんは涙目になった。
「『食事』じゃないでしょ、美沙ちゃん。『餌』ですよ、美沙ちゃん。 エ・サ!!」
「う、うぅ……。」
痛みの所為なのか、私にいいように扱われることの屈辱の所為なのか。私には分からないけれど、美沙ちゃんの眼から、涙が零れ落ちた。