第9章 拷問 ~前編~
「それでは、どうぞ。」
小さなモニターに、見知らぬリビングが映る。白を基調とした、生活感溢れるリビング。そこに、何やら端末を持っている女が映っている。多分、これが、矢田夏雄の奥さんなのだろう。荒い画質なのに、奥さんの手が震えていることが、ハッキリと分かった。そのうち、悲鳴が聞こえてきた。音質はやはり、あまり良いとは言えず、絶叫になると、音が飛んでいる部分もあった。それでも、この光景は、充分に滑稽で、笑えた。数年前に見た、お笑いのTVなんて、比べ物にならない。お笑い芸人は、ここまで私を興奮させてくれない。
「……、っぷ、あはははははは!! これ、最高のエンタメじゃない!!? この奥さん、リアクション芸人になれるって!!」
笑いが止まらない。もう、これは笑うしかないじゃない!
私は、ひとしきり笑いまくった後、小腹が空いたので、冷蔵庫にあったスイーツを、適当につまんだ。生クリームを使っているのに、べったりとした味わいにならない辺りが、高級品の高級品たる所以だと思う。上品なその味わいは、私の舌の上で淡雪のように溶けていった。笑い過ぎて疲れて、小腹も満たされ、昼寝もした。今夜は長いかもしれないし、備えあれば、憂いなし、みたいな感じかな?