第9章 拷問 ~前編~
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深夜0時。とあるマンションの前に、私とセバスチャンはいる。今回は急だったから、防犯装置は全て、セバスチャンに頼んで物理的に破壊してもらった。だからあまり時間はない。でも、構わない。
「さぁ、お姫様。お迎えに上がりましたよ?」
セバスチャンが、ドアを蹴破る。私には、軽く蹴っただけに見えたのに、そこは悪魔だからだろう。ドアは、鍵もろとも、見事に破壊された。というか、ドアが2つに折れ曲がっている。こんな光景、初めて見た。城本美沙のことは、まぁ、これから囚われのお姫様になるのだし、せめて「ちゃん」付けて呼んであげよう。
その音で、城本美沙ちゃんは眠りから覚めたみたいだけれど、関係ない。
「お久しぶり、こんばんは。城本美沙ちゃん。」
セバスチャンは、素早く城本美沙ちゃんを拘束して、声も出させなかった。
ベランダから、そのまま上空へ脱出。実に鮮やかな手際だった。向かった先は、廃ビル。
そう。今日からここが、お姫様にとって素敵なお城になるのだ。私にとっては、宴の会場になるのだ。
1時間と経たないうちに、私とセバスチャンは廃ビルに戻って来られた。これも、セバスチャンが持つ悪魔としての能力の成せる業と言えるだろう。
「あ、セバスチャン。餓鬼殺しの動画、ちゃんと端末に保存してる? それ、矢田夏雄の奥さんに、説明文付きで送っといて。あと、私今から、城本美沙ちゃんにあんなことやそんなことをするから、私の顔が映らないように、動画撮影よろしくね。まぁ、私も適当に変装はするし、声も出さないようにはするけど。矢田きみえ? さん? だっけ? とにかく、奥さんの代わりに、浮気暴いて制裁まで加えてあげるんだし、感謝状モノだよね。コレは。」
私の口は適当なことを喋りながら、意識はもう、城本美沙ちゃんを痛めつけることでいっぱいだった。鞭打ちからはじめて、きちんと躾をして、ペットにしてから、殺すのが、今回の目標。そんなことを考えるだけで。パンツが湿ってくる。あぁ、もう。ダメ。最近は、考えるだけで興奮して、呼吸まで荒くなってしまう。はしたないのかもしれないけれど、今更もう、誰に恥じることも無い。私はこの復讐が終われば、燃え尽きるようにして、死ぬ。永遠の苦しみとやらに晒される未来しか、待っていない。それでどうして、何を憚ることがある? ……嗤える。