第15章 ・牛島兄妹、双子と邂逅 その3
「だってとても危ない勝負でした。」
「そうやったけど結構操作馴染んでたで。」
「それは嬉しいお話です。」
「アカンわ、この子。」
「とにかく」
ここで無駄に若利は決めた。
「これでわかっただろう、文緒をここに連れてくるのは推奨しないと言ったのが。特にあのゲームをやらせると見境がなくなる。」
「思った以上に好戦的なんは確かやな。」
「あら何て事。勝負を挑まれたので受けただけです。」
じろりと見る治に文緒は抗議する。
「くっそおおおおお。」
一方侑はまだうるさくしていた。頭を抱えてのけぞっている始末、まるっきり漫画である。
が、すぐに落ち着いて文緒に顔を近づけた。若利がたちまちのうちに嫌な顔をし、治がやめろや恥ずかしいと突っ込むがどこ吹く風だ。
「ええなぁ、文緒ちゃん。」
人を食ったような笑顔のアップは文緒としては困る以外の何者でもない。
「最初はただお澄まししたにんぎょ(人形)さんみたいや思(おも)たけど、楽しいなぁ。」
「あの」
「そのおにんぎょさんみたいな顔、もっと煽ったらどんな感じになるんやろなぁ。」
「仰ることがよくわかりません。」
ニィと笑って文緒を凝視する侑、視線をどこにやったらいいのかわからず戸惑う文緒、何やら妙な雰囲気を察したのかそれとも単純に義妹に顔を近づけられているのが不快なのか、とうとう若利が動いた。
「それ以上顔を近づけるな。文緒、もう少しこちらに来い。」
「はい、兄様。」
義兄に手を引かれて文緒が離れていった為、侑は衝撃を受けたらしい。
「俺何か汚れもんみたいやんっ。」
「大体合(お)うてるやろ。」
「せやから俺は紙のごとく真っ白」
「紙は紙でも藁半紙やろ。」
「腹立つーっ。ああもう何でもええわっ、次サムっ、お前文緒ちゃんとやれっ。」
「ハアッ、いきなり何決めてんねんこのクソボケっ。」
「相方の敵(かたき)を取ったろうっちゅう兄弟愛がないんかっ。」
「何が兄弟愛じゃ気色悪いっ、お前との間に愛があってたまるかっ。」
標準語ではない為に少々迫力に欠ける喧嘩ではあるがこのまま放置する訳にもいかない。
「兄様、どうしましょう。」
「止めるしかないだろう。いつもならチームの誰かがやっているのだろうが。」
「ですがどうやって。」