第3章 ・告白された話
知らない男子生徒に声をかけられた。
何となく警戒してしまい断りたい所だったが昼休みで人気のない自販機前に1人いる所を捕まえられてはどうしようもない。
話があると言われて何かと思ったら名乗られた後に好きです付き合ってくださいと言われた。
瀬見以来の事で面食らいつつも文緒は即答えた。
「ごめんなさい、それには応えられません。」
頭を下げる文緒に相手は苦笑した。他に好きな奴がいるのかと聞かれて文緒は頷く。相手はしばらく沈黙してから言った、やっぱり兄貴かと。
微笑むにとどめた文緒だが充分な答えだった。相手はそうかと呟き邪魔してごめんと去っていく。
文緒は何とも言えない気分でその後ろ姿を見送った。
そして五色工はその一部始終を目撃してしまっていた。
そういう訳で五色はその日の放課後、男子バレー部の部室へいきせきって駆け込んでいた。
「たたた大変です、瀬見さんっ。」
「何だよ工、いつにもましてウルセーなあ。」
「だだだだってマジ大変です、文緒が、文緒が」
「何だ、また誰かの喧嘩買ったのか。」
「じゃなくてっ、昼休みに告られてたんですっ。」
一瞬の沈黙の後、
「何いいいいっ。」
瀬見は叫んでしまい白布から瀬見さんうるさいですと言われる始末である。ハッとした瀬見はシャシャシャと五色の側によってヒソヒソと言う。
「おい、そのものすげーのどこの誰だよ。」
「1年ですけど俺の知らないやつです。」
「で、文緒は何て。」
「応えられないって謝ってました。」
「ま、そーなるわな。」
「あはははは、文緒ちゃんと言えば若利君の嫁ってのは周知の事なのにそいつやるねえ。」
「馬鹿やろ天童っ、声がでけえっ。もし若利に聞こえたら」
だが瀬見の言葉は少し遅かった。
「俺に聞こえたら何だ。」
後ろから聞き慣れた低い声で言われて瀬見と五色は飛び上がる。
「牛島さん、ちわっす。」
「よ、よー若利。」
大変ぎこちない2人に対し、若利はそこには特に突っ込むことなくふむと考える様子を見せる。
「困ったものだ。」
「あのな若利、」
嫌な予感でもしたのか大平が口を挟むが若利は聞いていない。