第13章 ・牛島兄妹、双子と邂逅 その1
「ああ、ああ何てこと。」
甘味の匙から手を離して文緒は両手で顔を覆った。
天童がふざけて義兄に踊らせた所を撮ったあの動画、天童が監督の鷲匠筆頭に学校側からこっぴどく怒られた後速やかに投稿されたサイトからは消された。
しかし一時的にでもワールドワイドな所に公開されていたのだ、国内の奴が知っていてもまったくおかしくはない。
「自分大変やなぁ、めっちゃ有名やで。」
更にツムと呼ばれた金髪の方が笑う。
「あの動画すぐ消えたけど牛島君が何かちっちゃい子抱っこして愛でてるおもろい、萌えるーって大騒ぎやったもん。」
「萌えとは。」
「愛おしく思ったり好きだと思ったりする気持ちをそう表現する方々がいらっしゃるそうですが兄様今はそちらではありません。」
「大体牛島君何であそこで抱っこしたん。」
「あれを撮る時音楽の再生を手伝ってもらった。単に労(ねぎら)いのつもりだったがどうやら思う以上に妙な事になっていたようだな。」
若利が説明するとサムと呼ばれた銀髪の方が不審そうな顔をする。
「労いで抱っこて妹いくつやねん。」
「私は15です。」
「中学生。」
「いいえ、高校生です。」
「嘘やろ。」
「ははっ阿呆やぁ、サムが間違(まちご)うとるわ。」
「うっさいんじゃクソツム、ロリの歳なんかわかるか。」
「文緒はドローレスじゃない。」
「さっきからそれ何なん。」
ツムの方の疑問に文緒がロリータの元はアメリカ文学作品であり、そのヒロインであるドローレスの愛称から来ている事を説明した。
「ですから私はドローレスではないと申し上げました。」
「いちいち小難しいやっちゃなぁ。」
「事実だ。」
苦笑するツムに若利は淡々と答える。だが一方で片手が隣に座って再び甘味を食する義妹の頭を撫でているものだからどうにもちぐはぐ、見慣れない方からすると笑いを誘われている。
実際この時宮兄弟は密かに笑いをこらえていた。それなのに若利はだが強いて言えば、とそこへ更に爆弾を投下した。
「愛らしい娘であることは共通している。」
「兄様っ。」