第9章 ・若利のやってみた
「ああ、ああもう何てこと。」
牛島家では文緒が両手で顔を覆って嘆いている。
「最近のスマートフォンは随分と画質がいいな。」
「兄様、そういう問題ではありません。」
「確かにここまで撮影しているとは思わなかった。加工を施してくれているとはいえ天童にはよく言っておこう。」
「そこは是非お願いします。でも兄様、何故わざわざ私を持ち上げたのですか。」
「愛らしいと思ったらそうしていた。」
「聞くだけ無駄だったかな。」
「何か言ったか。」
「いいえ兄様。」
「そうか。何をしている、早く布団に入れ。」
「嫌です、自分の部屋で寝ます。」
「そうか。」
「兄様、離してください。」
「聞くつもりはない。」
「あっ、力任せになさるなんてずるいです。」
「逃げるなら捕まえるしかない。」
またも自分の寝床に入れようとしてくる若利に文緒は抗議の声を上げようとするも愛はあるがやや強引なやり方で唇を塞がれてしまったのだった。
なおこの動画は後々若利がゲスト出演する全国ネットのテレビ番組で取り上げられる事となるがそれはずっとずっと先の話だ。
次章に続く