第6章 ・【外伝 】潔癖と怪童
東京は井闥山学院高校の佐久早清臣はスマホを見て物凄い顔をしていた。半分はマスクに隠れているものの眉間の皺と醸し出す雰囲気からして物凄いのは明らかである。
「おい、どーしたよ。」
チームメイトの古森が話しかけると佐久早は振り向きもせず黙って古森にスマホを突き出す。受け取った古森は起動されているニュースアプリの画面を一目見てお、と呟いた。
「ウシワカネットの記事にも載ってんのか。流石。」
そういう古森だって只者ではない訳だが。
「それはいいけど中身。」
ブスッとしてほとんど唸るように言う佐久早、古森はどういう事だと記事の詳細を読み始める。途端にブッと吹き出した。
「おいちょっと待て、この記事書いたん誰だよ。」
古森が言うのも無理はあるまい。月バリのその記事は宮城県の白鳥沢学園高校男子バレー部主将牛島若利を取材したもの、それはいい。しかし見出しが"牛島若利意外な一面、休日は妹と"となっている。
どうやらかの東北のウシワカのプライベートに切り込んだ模様だ。何々と呟いて古森は記事の一部を音読する。
「あまり遊ばないイメージがある牛島さんですが休日はどうされているんですか。鍛錬は怠らず部のメンバーと過ごす事もあります。が、最近は時間が許す限り妹と過ごすようにもしています、ってマジかよ。」
更に古森は記事を読み進め、ウシワカが妹と出かけたり一緒に家の事をしたりしているなどといういらないといえばいらない情報を得る事になる。
「梟谷の木兎が言ってたシスコンってのがまさか記事にもなるとはなあ。」
佐久早がますます不機嫌オーラを出した。古森からスマホを返してもらって懐にしまう間も押し黙っている。
「相当気に入らないみたいだな。」
言う古森に佐久早は頷きすらせず呟いた。
「若利君が堕落させられた気分。」
「お前潔癖も程々にしねえと寿命もたないんじゃね。」
「どんな顔の奴か気になる。」
「木兎んとこ突撃してあれこれ聞いただけじゃまだ足りねーのか。」
「顔確認して文句言いたい。」
「そういや木兎も写真持ってなかったな、ロリだって言うばっかで。ただ文句言うとかやめろ、過激か。」
「若利君に聞いたらわかるよな。」
「何がお前をそんなに駆り立ててんだやめろって。」
流石に慌てる古森だが生憎佐久早はやめるつもりがないらしくズンズンと休み時間の廊下を歩いていくのだった。