第5章 ・片仮名語
ぱっと聞けば普通の会話だが双方最後の最後まで片仮名語を使うまいとお互い必死である。
そうしてこいつらは食べ物の話だけで延々とその勝負を続け、そのまま昼休みが終わるという形になった。
時は過ぎて放課後である。
「で、結局文緒には一矢報う事もかなわずか。」
瀬見が言う。天童は消化不良も甚だしいといった顔で部室の机に顎をおく形で座っている。
「あんだけ昼飯の間も粘ったのにくっそーっ。」
「最初に躓きまくったんだから当然でしょう。」
「賢二郎はホント容赦ないのね。てかさ若利クン、最近文緒ちゃんちっと生意気になったんでない。嫁の躾が悪いよー。」
「今までがあまりに物を言わなかっただけだ。それだけ心を開いてきたという事だろう。それとまだ嫁じゃない。」
「最強の変換来た。」
川西が呟く一方で若利はそれよりと言う。
「一つ、根本的な話をしていいか。」
「何なの。」
ブスッとしたまま言う天童にしかし若利は気を悪くすることなく言う。
「そもそも文緒に言葉の勝負を仕掛けるのが無謀だったのではないか。」
その場にいた全員が固まった、もちろん天童もだ。
「若利。」
大平が冷や汗を浮かべて呟いた。
「どうした。」
首を傾げる若利に五色までもが冷や汗を浮かべて言った。
「牛島さん、それは言っちゃおしまいという奴です。」
「そうか。」
「おい天童、落ち着けよ。」
山形が言うのも虚しく天童はムッキーッと叫び男子バレー部の部室はしばしやかましい事になったという。
後日の事だ。
「おはようございます、天童さん。」
「おはよ、文緒ちゃん。いやあすっかりやられちったよ。」
「私も気を張る日々でした。でも面白かったです。」
「言うねえこのロリ。」
「あら天童さん、約束が違います。」
「幼妻とか幼女は言わないけどロリとかは言わないって話じゃなかったもんね。」
「何て事、屁理屈にも程があります。」
「何とでも言って。あ、このアイス食ったんだけどうまかったよ。新発売、オススメ。」
「ありがとうございます。」
次章に続く