第3章 ・告白された話
「こりゃ家帰ったら文緒さんは若利に離してもらえないな。」
「部屋にあげているのはいつもの事だ。」
「まだやっていたのか。」
「触れ合いは重要だろう。」
「つか寧ろ今日は一緒のベッドだねー。」
「天童、いい加減にな。」
「何故わかった。」
「若利も普通に返事しないでくれ頼むから。」
「大平さんが頭抱えちゃいましたっ。」
「何か問題があったのか。」
若利は本気で首を傾げた。
実際文緒はその日の夜義兄にとっ捕まっていた。
「今日は何も言わないようだな。」
「慣れました。」
若利のベッドの中、隣で横になっている文緒は言う。
「そうか。」
「ですが兄様、今回もご心配が過ぎるのでは。」
「どうにも落ち着かない。身内に人目を惹く娘がいる者の苦労がわかる。」
「確かに知らない方から話しかけられることは激増しましたが私の見た目はそんなに目立つのかどうか。」
「自惚れが過ぎるのも困るが愛らしさをあまりに自覚しないのもどうなのか。」
「それを言ったら私は毎日のように誰かに嫉妬しないといけなくなります。」
「何の話だ。」
もうと文緒は言いつつも微笑んだ。
「私だって人間です。ここに来てから最初は兄様が綺麗な方とお話しされているのを見る度落ち着きませんでした。」
言って仰向けになる文緒を見ながら若利はむ、と呟く。
「他の娘には興味がないと言っていたはずだが。」
「それでも落ち着かなくなるのは人情と言うものです。」
「そうか。」
若利は言って仰向けになった義妹を無理矢理自分の方へ向かせる。不思議そうに兄様と言おうとしたその小さな唇を若利はそっと自分のそれで塞いだ。
「兄様。」
「お前でも嫉妬をするということがあったのか。」
「申し訳ありませんが私は兄様のように自分に自信がある訳ではありません。」
「今は。」
「兄様ほどの方なら仕方ないと大分思えるようになりました。どうしてもまだ残る所はどうかお許しください。私には兄様しかいませんから。」
「そうか。」
若利は呟いて義妹を抱き寄せる。
「俺には生憎わからない感情も多いが案ずるな。愛しているのは変わらない。」
文緒は私もですと呟き若利の胸に顔を埋める。はたから見れば末長く爆発しろと言われそうな夜は更けていった。
次章に続く