第1章 体温で溶ける恋の味
そんなに見詰められると、顔を見たまま言える気なんかしなくて俯く。
「…私、京治の事が好きなんだ。幼馴染みじゃなくて、彼女として、傍に居たい。」
やっと言えた告白。
声は震えている上に小さくて、聞こえているか分からない。
京治の返事は無くて、時間だけが過ぎていく。
もう、ノーでも良いから早く返事して。
私の心臓がもたない。
「みやび、これ食べて良い?」
暫く待って、返ってきたのは返事じゃない。
それとも、聞かなかった事にしておく、ノーの返事のつもりなんだろうか。
それなら、普段通り幼馴染みの顔をして話を続けるのがベストかな。
「どーぞ。でも、ソレもチョコだよ?」
「いいよ。みやびが作ったものなら。」
さっきの、期待していい、じゃなくて、期待させていい、の間違いだったんじゃ無かろうか。
嬉しい筈の言葉なのに素直には喜べない。
開けられた包み紙。
中の箱を開けて出てきたチョコを摘む指先。
躊躇無く、京治の口の中に茶色の球体が入れられた。
「…ねぇ、みやび。これ、味見は?」
「してない。ビターチョコレート使ったから。」
「だろうね。」
味についての感想も無く、そんな事を言われたら不安だ。
不味かったんだろうな、と今更な味見をしようと箱に手を伸ばした。