第1章 体温で溶ける恋の味
受け取ってくれた。
それだけでも嬉しいんだけど。
人間というのは欲深い生き物で。
伝えてしまいたい、と思ってしまう。
いつも通りのご飯の後。
いつも通りの部屋の中。
私達の、この日常を壊しかねないと分かっているのに。
「みやび、聞いていい?」
「うん。どうぞ?」
「昨日、見た限りだと手作りはコレ1つだった気がするんだけど?」
先に壊しに掛かってきたのは京治の方だった。
京治は、分かってるんだ。
手作りチョコレートに秘められる想いを。
だから、探るように聞いてくる。
「そうだよ。作ったのは、それだけ。」
この言葉の後の、京治の返事で全てが決まる。
壊されるのは、日常か。
それとも、幼馴染みって関係か。
後者であって欲しいと、願うのは我儘だろうか。
「期待して、いい?」
その返事の意味を理解するまで数秒。
解ってしまうと顔に血が集まってくるのを感じる。
だって、今の状況で期待するのは、私からの告白、って事だと思いたい。
頷いてから、深呼吸。
今日という日に関係を壊すなら、関係を変えるなら、覚悟を決めて言わないと。
「…京治、あのね。」
聞いている事を示すように、京治がじっと私を見ていた。