第32章 最後の一欠片
〈ピンホンパンポーン……〉
〈みなさん、おはようございまちゅ。気持ちのいい朝でちゅよ!〉
〈最終日の今日も、元気に1日を過ごしましょう!〉
その時、朝のウサミのアナウンスが流れた。
いつの間にか夜が明けていたみたいだ。
「……っ」
居ても立ってもいられず、自身のコテージから飛び出す。
今の時間ならレストランの方にいるはずだ。
プールサイドを横切り、ホテルのロビーに入る。
丁度ロビーからレストランに繋がる階段を上っている最中の希灯の背中が見えた。
「希灯……!」
『……あ。日向くん、おはよ……ッ!?。』
階段を駆け上がり、希灯の手を掴む。
「あのさ、俺さ……! お前のこと、島から出るための手段としてしか見れてなかった。これからは改める。次の50日間も、それ以降も……たとえ島から出られなくなったとしても、希灯にちゃんと向き合ってみせる!」
希灯の手を両手で包むように握りながら目線を合わせる。
『え、えっと……いきなり何の話……?。』
突然詰め寄られて捲し立てられた希灯は戸惑いながらそう口にした。
その言葉と同時に、2人のポケットから短い電子音が鳴る。
数十日ぶりに聞く、希望のカケラが埋まったときの通知音だった。
『あー……埋まったね?。』
困ったように掴まれた手と俺の顔を交互に見ながら、眉尻を下げる。
「そ、そうだな……」
宣告とは裏腹に、今日が最終日になることが確定した。 気まずげに2人してその場に立ち尽くす。
「お? 朝から愛の告白っすか? カケラ埋まったってことは誉稀ちゃんもOKってことでぉk?」
「大胆ですなぁ!お祝いにケーキ作っちゃおうかなっ!」
朝のレストラン、みんなが何だ何だとレストランから階段の俺たちを覗き込んでいた。
自分で思うより大きめの声で話していたみたいだ。
俺の希灯への言葉は筒抜けだったらしく、さらに羞恥心が込み上げてくる。
「み……見せ物じゃないぞ! 」
希灯の手を取ったまま階段を上がり、生温かい視線に抗議しながらレストランに入る。