第1章 総統のいたずら
ピンポーン……ピンポーン……
あぁ、まただ。と私は誰がインターホンを押したのかを予想しながらシャワーを止めた。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン……ピポッピッピピピピピピピンポーン……
けたたましい電子音が部屋中を襲う。
バスタオルで体を軽く拭いて最低限の下着であるショーツを身につける。その上からバスタオルを体に巻き付けシャワールームから出た。
ピンポーン……ピンポーン、ピンポーン……
すぐ側にある個室の出入口のドアノブに手をかける。
相変わらず続くチャイムに辟易しながらドアを少し開け、部屋の前に立つ人物を睨み付けた。
「あっ、やっと出てきた! 希灯ちゃんコンバンワー」
にしし、と笑いながら白い服の男がインターホンから手を離した。
『……用もないのに来ないでよ。毎晩毎晩、人が風呂に入ってるタイミングで訪問してるの何回目か分かる?。』
「えー? 偶然じゃない? オレ、希灯ちゃんがお風呂に入ってるなんて全然知らなかったよ?」
童顔低身長の男――王馬小吉が白々しく首を傾げた。
そうだ……この無意味な呼び出しは全て私が風呂でシャワーを浴びている時にしか起こったことがない。
入る時間帯もバラバラだし、そこまで長く入っている訳でもない。
流水音で確かめているんだろうか……。
「最近出てくるの遅くなってなーい? 最初は大慌てでさ、どうしたの?! なんてそこら中を水浸しにしながら出て来てくれたのに……そんな冷めた反応、オレ寂しいよ………」
涙ぐみながら個室のドアノブを引っ張ってきた。
さては部屋に入る気だな……?。
そう思って、手をかけたままにしていたこっち側のノブを負けじと引っ張って侵入を阻止する。
『嘘泣きしたって無駄だよ……。君はただからかいに来ただけでしょ。私が慌てて出て来る姿が面白かったから、見に来ただけなんでしょ。』
「イヤだなー、希灯ちゃんったら。オレは誰かの標的にされてそうな弱っちいモブ顔の女の子が殺されてないかどうかを確かめに来てるだけだよ!」
心底心外だ! という反応をしながら不穏な悪口を言ってくる。
どうせそんな現場を目撃しても余計な手を加えて偽造工作するだけだろう……。
ドア越しの口論と同時にノブの引き合い迫り合いが続く。