第2章 アドルフ・ラインハルト
ここはU-NASAドイツ支部の特別病棟
私はずっとここのベッドで寝ている
意識はあるのだが
時々、気を失うかのように倒れてしまう
症状が治らず
ずっと入院を続けていた
体にも脳にも異常はないのだが
原因不明である
「ママ!」
病室の扉を開けて
愛しい我が子が入ってきた
ぎゅうっと抱きしめると
笑顔で強く抱きしめ返してくれる
可愛い私たちの子
金色の髪にグリーンの瞳で
少しタレ目
子どもの成長って早いのね
少し見ない間に
本当に大きくなった
あなたそっくりだよ
「ママ、パパ、大好き」
「うん、ママもパパもあなたが大好きよ」
この子をずっと見ててくれた
この施設にも感謝しなければ。
私とアドルフくんの力が遺伝してるかもしれない
この子を研究対象としてではなく
普通の子として
見守ってくれた。
約束ちゃんと守ってくれたから
非情なだけの施設じゃないって
わかった
だから信頼して
今でもこの施設に入院している
火星から帰ってきてから
もう1年がたっていた
100人で火星に向かった乗組員達
地球に帰ってきたのは
わずか20人弱だという
私はドイツ班の唯一の生き残りだった
あの時、何があったか
思い出そうとするた
ひどく頭が痛む
けど…はっきり覚えていることがある
それはアドルフくんのこと。
あなたをずっと抱きしめていた記憶
だけはしっかりと残っていた
それと、もう一つ
地球に帰ってからわかったことだが
アドルフくんのデンキウナギの能力
それがなぜか私も使えるようになっていた
しかしアドルフくんとは違う点は
違うデンキウナギの力を使うと
ひどく痛みを伴うということ
アドルフくんの身体中には
自分で感電しないように装置がいくつも
組み込まれていたが
私にそれはない
最初に私のこの変化に気付いた
研究員の1人が調べた結果
感電して体を痛めても
私のプラナリアの能力で
すぐに再生しているとのこと
なぜがアドルフの能力を!?
と、何度も何度も聞かれた
そんなこと聞かれても
私にわかるわけない…
あの時のこと
ゆっくりと
思い出してみようと思う
つらい記憶かもしれない
けど、
思い出さなきゃいけない気がするから。