第53章 Two sides of the same coin
「ねぇ家康、何でかな?どうすれば良いの?私」
リオの声色から今、彼女がどんな表情をしているのか、想像が出来る。
その姿、それが今向けられて居るのは、家康に。
ふつふつと心に黒いものが迫り上がって来た。
リオのあんな顔を、長らく家康に晒してやる必要は無い。
幾らその原因が俺だとしてもだ。
そろそろ潮時だな
そう思った瞬間
「光秀さんが何考えてるかなんて分からない。でも思いきって、可愛くおねだりしてみたら?そしたらきっ.......ちょっリオ?........」
ぱさりと床に本が落ちる音が聞こえた
はっとして、書庫に飛び込んだ
家康に片手で抱き止められ、身を寄せるリオの姿。
そのリオの顔を、触れ合う程に近い距離でまじまじと見つめている家康
体の中に一瞬で沸騰しそうな程の
怒りが込み上げた。
家康の手のから、掠め取る様にリオの体を奪い横抱きにし、背を向け
「色々忘れろ家康」
それだけを告げ、隠す様にリオを庇いながら、すっかり日が落ちた夜の中を、馬を走らせた。