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【企画SS】引力には逆らえない。【HQ及川徹】

第2章 引力には逆らえない。side.O


「チョコ、良かったの…?受け取らなくて」

バレー部の部室に入ってから口を開いたちゃんの言葉。
ホントは受け取って欲しくないくせに、そう言葉を返しかけてやめる。

その代わりにちゃんの、あの例え話を始めた。

「恵ちゃんが毎年言ってる俺が磁石のS極で、女の子達がN極だって話」
「……?」
「その理屈から言うと恵ちゃんもN極なんじゃないの?」
「私は、違うよ…」

彼女はこれを否定した。
全く、そんな顔して何が違うんだか。

一歩、また一歩と壁際にちゃんを追い詰めて、逃げ場をなくしてから核心を突く。

「ねぇ、俺宛じゃないとしたら…その鞄の中のチョコレートは誰のトコに行くの?」
「……っ」

なんでって、顔してる。
知ってるよ、ずっとずっと見てきたんだから今日ちゃんの様子が違う事くらい簡単にわかる。

30センチ下にいる彼女の頬に手を添える。

顔をゆっくりと寄せていく。
あぁ、良かった。
突き飛ばされない。

コロン?いや、ちゃんはそういうの付けないからシャンプーかな。
甘い香りが鼻を掠めた。


「ちゃん、鞄のチョコレートは俺宛て、だよね?」

お願い、そうだって言って。
他のヤツでもなくて、岩ちゃんでもなくて、俺だって。


祈るような気持ちでそう聞いた。





「よかった……」

数秒置いて小さく頷いたちゃんに心底安心する。
大きなまんまるの目をパチパチさせながら俺を見上げるから。

我慢、出来なくなるでしょ。

更に距離を縮めて、可愛い唇に自分の唇を重ねた、
そしてずっと言えずに温め過ぎな程の自分の内にある想いを伝える。

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