第2章 引力には逆らえない。side.O
「好きだよ、…ずっとずっと好きだった」
「………う、そ…」
信じられないって顔。
口も半開きになっちゃってるけど、キスしたのわかってるのかな?
「ちゃん、キスしたのわかってる?」
「キス…………キッ…!!!」
あ、やっぱりわかってなかった。
指摘されて漸く気付いたちゃんは顔を赤くして自分の唇を触ってる。
全く、そんな仕草見せられたら…もっと欲しくなっちゃうでしょ。
ちゃんは片手を差し出すと遠慮がちに小さな包みをその手に乗せた。
それを見て俺の心臓は大きく跳ねた。
それは、まるで俺たちのユニフォーム。
その包みに込められた彼女の想いを考えたら胸が熱くなった。
俺を想って、準備を進めてくれたんだって伝わってきた。
ずっと、この1つだけが欲しくて欲しくて。
「…ありがと、やっと手に入れた」
俺の言葉を聞いて顔を上げたちゃんはふんわりとした笑顔を見せてくれた。
俺が一番、好きな顔。
「恵ちゃんは確かにN極じゃないかも」
「え…?」
「何でもない」
「と、おる…っ」
だってちゃんはN極に例えた岩ちゃんだって引き寄せてるんだから。
笑顔に釣られて、不意に岩ちゃんの想いまで口走りそうになって慌てて口を噤む。
それは、ルール違反だからね。
再び重ねた唇。
彼女の記憶に残るようにゆっくりと舌を絡める。
「一度引き寄せたら、もう離さないから」
そうは言ったものの、きっと引き寄せられてるのは俺の方。
だから離さないじゃなくて、離れられないが正しい気がする。
そんな思いとは裏腹に、俺は余裕たっぷりな笑顔を見せてまた彼女に唇を寄せる。
……チョコより甘い言葉を耳元で囁いて。
END