第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
「なーんかアソコ仲良くしちゃってるけど。黒尾さん、いいんですか?」
ツッキーがニヤニヤしながら近づいてくる。
本当、いい性格してるよコイツ。
こんな煽りに俺が乗ると思う?
「いいんじゃね?楽しんでんだから。それに赤葦彼女いんじゃん?別にどうもならねーだろ?」
今日は梨央ちゃんが楽しめればそれでいいんだよ。
鼻で笑ってかわしてみせる。
すると、赤葦がうちわでパタパタ火を起こしながらサラッと呟いた。
「あー、俺。別れましたよ、彼女と」
あまりにサラッとし過ぎて、ふーん、と流しちまいそうになるくらい。
「……マジで?」
「はい。三ヶ月くらい前ですかね」
「え!?何で何で!?」
木兎は早速話に食い付く。
「仕事で中々会う時間取れなかったりで。寂しい思いさせちゃったんですよ」
ああ…自分に否があるって言い方も、なんかこいつらしいな。
落ち込んでんのか、いねぇのか。
ポーカーフェイスでわかんねぇけど、これだけは言っとく。
「赤葦。だからって、梨央ちゃんに手出すんじゃねぇぞ?腹ん中どんな変態飼ってるかわかんねぇからな、お前は」
「どんなに頑張っても黒尾さん程じゃないですから。安心してください」
「やめろ!梨央ちゃんの中での俺は、 "爽やかなてっちゃん" なんだから!」
「え?そんなこと、思ったことないよ」
梨央ちゃんは呑気に笑ってる。
……。
泣いていいかな?