第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
「ふふっ。仲いいんだね」
梨央ちゃんが俺たちを覗き込んで笑う。
「仲いいよなぁ?ツッキー?」
「……」
シカトですか。
取りあえず梨央ちゃんに紹介。
「あ、こいつツッキーね」
「 "月島" です。よろしく」
いまだにあだ名嫌がるよね、この子。
無愛想に名乗るツッキーに臆することなく、梨央ちゃんは笑顔で返す。
「梨央です。よろしく、ツッキー」
「……」
「ブヒャヒャ!ツッキー、ざまぁ!」
そうだった。
梨央ちゃん、俺と研磨にも早々にあだ名つけるような人懐っこいタイプだったわ。
「ナニナニ!?後ろ楽しそうじゃーん!」
「木兎サン…。席代わりませんか?」
「お?ツッキーどしたー?てか赤葦、次のコンビニ寄って。トイレ行きたい」
「だから言ったでしょう?」
騒がしくなる車内。
何より、梨央ちゃんが笑ってくれてホッとする。
今日のこの時間を、少しでも楽しんでくれますように。
30分程走って到着した河川敷。
同じようにバーベキューしているグループや家族連れで賑わっている。
炭、コンロ、買ってきた肉や野菜、飲み物。
全員で手分けして準備する。
「わぁ!慣れてるね、赤葦くん」
「面倒くさがりが多いんで。やむ無くですよ」
梨央ちゃんは早々に場に馴染んでいた。
赤葦のそばで火を起こすのを見ながら、肉や野菜を並べている。