第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
カーテンの間からこぼれ射す光と、クローゼットが開く音。
意識を引っ張られるようにして目が覚める。
そばには梨央ちゃんが俺のスーツを持って立っていた。
「おはよ」
「あ、おはよう。ごめん、起こしちゃったね。目が覚めちゃったから、準備しとこうと思って」
「今何時?」
「5時回ったとこ」
梨央ちゃんはいつもみたいな笑顔。
でも、目が少し腫れている。
「ごはん、何食べる?」
「俺飯はいいや。いつもコーヒーで済ませるし」
「そうなの?じゃあ、コーヒー入れるね」
「ありがとう」
昨日のことは……うん、ぶりかえさないがいいな。
梨央ちゃんの中で結論が出たみたいだし。
それに、梨央ちゃんだって今から仕事だ。
変なこと話して心を乱さない方がいい。
俺も一度家に帰って、着替えてから出勤しねぇと。
昨日着てた服をまた身につけて、洗面を済ませる。
リビングに戻ると、梨央ちゃんがテーブルにコーヒーカップを置いてくれた。
「ほんとに何もいらない?ヨーグルトとかどう?」
「あー、じゃあもらえる?」
「はーい」
いそいそと準備する梨央ちゃんの後ろ姿を眺める。
だからその服エロいんだってっ…!
昨日も着てた部屋着。
スウェット生地のワンピース。
長袖で丈も膝下まであるから、露出があるワケじゃない。
でもな、生地が薄いんだよ!
そうやって動く度に体にまとわりついて…。
膨らんだ胸とか、くびれた腰回りとか、そこから曲線を描く尻とか。
ラインが丸わかり!
この服の下の体は…って想像を掻き立てられて、何とも言えねぇエロさ。