第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
*黒尾side*
雨足が強くなる中、見つけた彼女。
驚くほど虚ろな顔をしていて、普通じゃないのがわかった。
今日は休みだったはず。
それなのにこの場所にいるということは、彼氏と一緒にいたんだろうな…。
そこまでは想像できた。
理由を聞いても梨央ちゃんは何も言わねぇ。
言えねぇとしても、せめて家まで送り届けなければ。
そうしなきゃいられない程、梨央ちゃんは脆く崩れちまいそうだった。
家の扉の前まで送って、やっと話してくれた彼氏とのこと。
生理中腹が痛いのにフェラを求められて。
それを拒んだら、「他に取り柄がない」と蔑まれたらしい。
ハラワタ煮えくり返るってこういうことを言うのか…。
何だよ…それ…!
梨央ちゃん、そんな思いやりのカケラもねぇような男と付き合ってんのかよ!?
クソッ…怒りのやり場がねぇ…!
でも俺の怒りよりも、梨央ちゃんの傷ついた心の方が重大で……。
そばにいてやりたい、一人になんてさせたくない。
そう思って、梨央ちゃんと夜を過ごすことにした。