第7章 君が唄うラブソング ※【月島蛍】
「…奈々子さん、ちょっと来て」
「待ってね?あとここに練乳を、」
「早く。ギュッてしたいから」
急かすようにそう言うと、奈々子さんの視線は一瞬にして目の前の氷から僕へと移された。
「おいで?」
手招きしてみれば、跳ねるように駆け寄ってきて僕の体にダイブする。
「蛍くんっ!好き~っ!」
「はいはい」
頬ずりしながら抱きついてくる奈々子さん。
愛情表現豊かなその仕草に含み笑いしつつ、そっと抱き返す。
奈々子さんの「好き」は、魔法の言葉だ。
僕を幸せにしてくれる。
それからいつも天の邪鬼な僕を、ほんの少しだけ素直に変えてくれる。
「僕も、好きだよ…」
夏はもう本番。
せっかく削ったのに刻々と溶け始めるかき氷。
二人で暮らすようになった部屋の中には、扇風機、夏用に買った麻のラグ、奈々子さんチョイスのスイカ柄のクッション。どこかの国の、碧い海のポストカード。
そして。
季節はずれのクリスマスツリーが、リビングを彩るように二つ、並んで飾られている。