第7章 君が唄うラブソング ※【月島蛍】
僕が女で遊ぶような男だったらどうするつもり?
ほんと、危なっかしい人。
「好きだよ、奈々子さん。
安心して愛されなよ」
きちんと言葉にしたのは、これが初めて。
奈々子さんが何十回とくれた「好き」に比べたら全然足りないけど。
でも、今、想いは同じ。
「うれし…」
途端、みるみる潤いを帯びていく奈々子さんの瞳。
ちょっと想定外で、思わず体が固まる。
「は?泣くとか何事!?」
「だって、蛍くん…。私が何も考えずにスキスキ言ってたと思う?」
「思う」
「もう!私だって不安だったんだよ?しつこくして嫌われてないかな、とか…」
「なに、それ…」
「でも会うと好きが溢れちゃって、言わずにはいられなくて…。
だから蛍くんが私のこと好きになってくれて、もう…幸せすぎる…」
この人は本当に、どこまでも素直だ。
僕があなたのようになれないこと、知っているのだろうか。
奈々子さんは僕に何も求めてこない。
でも何も求められないこの状況だと、こんなことを思う。
僕が素直になったら、あなたはどんな顔を見せてくれるのかな…って。
見たい。
知りたいよ。
「ほんっと大袈裟」
取り合えず、憎まれ口は許してほしい。
これからちゃんと、愛の言葉も囁くから。
「そんなんで、この先ダイジョーブ?」
「え?」
「とりあえず、奈々子さんさえ良ければ一緒に住みたいし、兄ちゃんには改めて彼女だって釘刺しときたいし、宮城にも連れて行きたいし。あ、何なら実家泊まる?家族にも紹介できるし」
「ちょ、待って…!それって、何か…」
「僕、将来のことを考えられないような人とは付き合わないよ。面倒くさいし時間の無駄デショ?
逆に考えられるような人となら、いずれ今話したような手順踏みたいって思ってる。
こんなの重い?無理なら今言って。
まあ無理って言われても、今度は僕から仕掛けるだけの話だけどね」
畳み掛けるように、自分の心を吐き出す。
躊躇いなく曝け出せるのは、今までずっと僕にそうしてきてくれた奈々子さんのおかげだよ。
きっとこんな恋愛、最初で最後だ。