第7章 君が唄うラブソング ※【月島蛍】
さっきよりも、もっと深いキス。
唇の隙間から、二人分の吐息と声が漏れる。
互いの唇が離れなくなってしまったみたいに、少し舌を引き抜いてはまた奥まで差し入れて、絡めて…
「はぁ…、んぅ…、」
唇の隙間からこぼれる奈々子さんの声は、色めいて艶のある "女" のもの。
あー…、ヤバ。すっごい色っぽい。
めちゃくちゃキモチイイし興奮するし、心まで満たされる。
もうこれだけで幸せ。
でも、僕は欲張りだから。
まだまだ幸せを感じたい。
蕩けるようなキスを重ねながら奈々子さんを抱き上げ、ベッドに移動する。
僕たち子どもじゃないんだからさ?
想いを通わせた直後にこんなことになっても、いいよね。
そっと寝かせて上からまたキスを落とす。
唇だけじゃなく、耳にも、首筋にも、鎖骨にも。
「奈々子さん、僕で頭いっぱいにして」
「いつでも…蛍くんのことでいっぱいだよ…?」
「今までよりもっとだよ」
ニットの裾から手を差し入れた。
素肌を求めて指先を動かしていると、やんわりと、でも確実に奈々子さんに邪魔される。
「待って蛍くん…」
「ナニ?散々好き好き言ってたくせに、今更その気はアリマセン、なんて、ないよね?」
「ちが…、嫌とかじゃなくて!それは絶対なくて!でも私…あの、ちょっと…、ううん、だいぶ緊張しちゃってて…はぁ…っ、どうしよ…」
「……」
積極的な奈々子さん、どこ行った?
恥ずかしがってるこの人なんて初めてみた。
ほっぺ赤くして、僕から目を逸らして、自分の腕で自分の体抱いて。
うわ…
すごく、可愛い。
この手で柔肌を撫で回したら、もっと可愛くなるのかな。
俄然、見てみたい。
「蛍くん、好き…」
それでも、この言葉はくれる。
いつもの「好き」よりも、甘くて艶っぽい「好き」だ。
「だいすき…」
「……」
そう言えば奈々子さん、僕の気持ち一度も聞いてきたことない…。
「私のこと、どう思ってる?」とか、「私たちの関係って何?」とか、そういうこと聞きたくなるもんなんじゃないの?女ってのは。
たぶん今、だだ僕を好きな気持ちだけで抱かれようとしている。