第7章 君が唄うラブソング ※【月島蛍】
誰にも邪魔されない、僕たちだけの世界。
暖かいままの室内に辿り着くなり、また奈々子さんを抱き締める。
さっきみたいに、僕の体に腕を回してくれる奈々子さん。
泣かせて赤くなっちゃった瞼、鼻の頭。
すごく愛おしくて、小さくそこに口づけを…。
くすぐったそうに身動ぎした奈々子さんに、瞳で確かめる。
触れるよ?あなたに…
顔を寄せ、色づいた唇にキスをそっとひとつ。
外気のせいか、そこはひんやりと冷たい。
初めて交わした奈々子さんとのキスに胸が高鳴っている自分と、もっともっとキスに浸りたい自分と、この体を早く温めてあげたい自分とで、心が忙しない。
二度目のキスをすると奈々子さんが微かに唇を開くから、衝動にも拍車がかかってしまう。
そこからはもう、何度目かなんてわかんなくなるくらい、触れて、啄んで、小さく音を立てて、上擦った声を飲み込んで…
柔らかくて甘い奈々子さんの唇をたっぷり味わう。
あんなに躊躇ってた自分が嘘みたいに、もっともっとキスしたくて堪らない。
唇から沢山、想いが届くように。
「蛍く…、ふっ…ん…」
"好き" って言ってくれようとしてる?
ごめん…、聞きたいのに、止められないよ。
奈々子さんが、こんなにも柔らかいから。
唇も、頬も、体も。
身長差を埋めるようにグッと背伸びして、僕のキスを欲しがってくれる。
いくらでもあげるよ。
唇を押し当てながら屈み肩と腰を抱き直せば、もっと強く抱きついてくる。
こんなに可愛い人のこと、何で僕は待たせてたんだろう…。
ふと途切れたキスの合間。
奈々子さんの指が僕の頬を伝い、その手はゆっくりと眼鏡を外した。
「…女より綺麗な顔してる。狡い」
「別に狡くはないでしょ」
「あ、でもね。私、蛍くんの顔がカッパだとしても、好きだからね」
「何で例えが妖怪なの…」
「あー…じゃあ他の考える。うーんとねぇ…」
「ちょっと黙ろっか。キス、全然足んない」
お喋りなら、声が嗄れるまで聞いてあげる。
明日の朝まで。
だから今は、もっとキスしよ?