第7章 君が唄うラブソング ※【月島蛍】
ギュッと抱き締める。
痛くたって知らない。
また逃げられたら困るからね。
もう絶対、どこにも行かせない。
「全然違うから。僕をツッキーって呼ぶ女友達が一人だけいて…ていうか、ほら、昼間の。赤葦さんの彼女なんだけど。木兎さんちでみんなしてよく飲むんだよ。それで勘違いしただけ」
「…あかーしくん、の?」
「そ。二人でいるとこ、見たでしょ?だから、奈々子さんが思ってるようなことじゃない」
泣かせたクセにこんなこと思うのはアレだけど…。
泣かないでよ。
僕が今から、ちゃんと笑顔に変えてあげるから。
「奈々子さんとの時間、僕は気に入ってる。
さっき誤解されたって思ったら、めちゃくちゃ焦ったし…。こんな風に必死で誰かを追いかけたのも、初めて」
腕の中の奈々子さんは、まだ揺れる瞳で僕を見つめてくる。
涙に濡れた頬をそっと指先で拭って、もう一度、強く抱いた。
「奈々子さんとは、ずっと一緒にいたいって…思ってるよ」
それまで戸惑うように伸ばされたままだった奈々子さんの腕が、ゆっくりと僕の体に回される。
「一緒に…いてくれるの?」
「うん」
「わたし…ずっと好きでいても、いい…?」
「うん」
「蛍くん…幸せ過ぎて、私、倒れちゃいそう…」
「それは困るよね。部屋、戻ろう?帰るなんて言わないデショ?」
「言わない…」
ギュッとしがみついて僕を見上げてくる奈々子さんの顔は、ようやく花が咲いたみたいな綺麗な笑顔へと変わった。
いつでも真っ直ぐな恋心をくれた、奈々子さん。
今夜は僕がめいっぱい、奈々子さんを愛する番だよ。