第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
私って本当、女として程度が低い。
料理も上手くないし、お洒落でもない。
家事だって得意じゃない。
この前も修一さんの洗濯物を畳んだら、たたみジワが目立つって怒られた。
それに、今言われたとおり、気が利かない。
痛い…。
お腹も、心も。
私は何をしても満足にこなせない。
食事が終わった私たちは、修一さんの家へ向かう。
どんどん先を歩いて行く彼。
いつもそうだ。足並みを揃えてくれない。
付き合う前はこんなことなかった。
横に並んでしっかり私の顔を見てくれていた。
言葉だって、今よりずっと優しかった。
付き合ってるのに、どんどん遠くなっていく気がする。
家に着くなり、修一さんはお風呂へ向かった。
私は痛み止めを飲んで、取りあえずひと息つく。
痛みにはいつもこの薬が効く。
もう少し時間が経てば、問題なく動けるはず。
お腹の様子を気にしながらお風呂が空くのを待っていると、修一さんが出てきた。
私もサッパリしよう……そう思った時、クイッと腕を引かれる。
「梨央。しよ」
「え?あ…ごめん。今日は……生理で…」
「俺気にしないし。あ、風呂場でする?」
「お腹が痛いの…」
「薬飲んだ?」
「うん…今飲んだけど…」
「じゃあ、そのうち効いてくるって」
「でも今は痛いし、生理中にするのは…」
食い下がってくる修一さんを何とかかわす。
「はぁ……しょうがねぇな」
渋々そう言う彼。
良かった、わかってくれて。
そう思ったのに…。
「なら、口でしろよ」
…………何?
私、お腹が痛いって言ってるのに……。
「今日は、本当に無理……」
何とか振り絞って断る。