第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
夕飯に修一さんと訪れたのは、私たちお気に入りのイタリアンのお店。
最初に連れてきてくれたのは修一さんだけど、私も気に入って、後日友達とも食べに来た。
今日も二人分のパスタとピザを注文し、それを待つ。
いつもなら美味しい料理を心待ちにしているところだけど、今日はちょっと意識が他に向いてしまっている。
痛い…。
少しだけ食べて、薬飲んだ方が楽かも……。
手の平を下腹部に当てて、こっそり撫でる。
そこへ、注文したパスタとピザのセットがやってきた。
食べられるかな…。
修一さんもいるし、大丈夫だよね?
テーブルの上の食事の量を眺めながら、ぼんやりと考える。
「梨央、取り皿」
「あ、はい」
テーブルの私側に置かれた白い取り皿。
それを一枚、修一さんに渡す。
「スープのスプーンも」
「ごめん…」
カトラリーの入ったカゴから、スプーンも渡す。
それを受け取った修一さんがため息をついた。
「ほんっと、気が利かねーな」
「……」
まただ……。
怒らせた……。