第7章 君が唄うラブソング ※【月島蛍】
「仲いいんだねぇ。いいなぁ、こんなお兄ちゃん欲しかった!」
「俺も奈々子ちゃんの兄ちゃんになりたいよ。奈々子ちゃん、本当に蛍と付き合ってないの?」
「はい。蛍くんのお眼鏡に敵わないみたいなんですよねー」
「贅沢だよな、蛍は。いつまでも奈々子ちゃんが待っててくれると思うなよ?
何ならさ、遠距離恋愛になっちゃうけど、俺で手を打ってみる?」
…ハ?
「明光くんみたいな人が彼氏だったら、確かに楽しいかも」
…ハァ!?
「でも私、やっぱり蛍くんが大好きなんで!」
「……」
ホッとしてるとか…
ナニコレ。
「ははっ、フラれちゃったか!よかったなぁ、蛍。じゃあさ、蛍のことで何か相談したかったら連絡ちょうだい?LINEやってる?交換しよっか」
いやいや、その手には乗らないから。
そうやって僕を煽るつもりなのはわかってるから。
大体、奈々子さんがこんなチャラオジサンと仲良くLINE交換なんてするワケないから。
「LINE?やってますよー。じゃあ…」
チョッット!!
何でホイホイ乗っちゃうの!?
アプリを開こうとする奈々子さんの手から、慌ててスマホを取り上げた。
「…蛍くん?」
「奈々子さんは思ってることあったらコソコソせず直接僕に言うから。相談なんて、必要ない」
僕が二人を遮るなり、兄ちゃんは薄ら笑いを浮かべる。
あー…、人の良さそうな顔してホンット嫌な性格。
奈々子さんも奈々子さんだよ。
いつも僕のこと好きって言うくせに、仲良さそうに。
奈々子さんが好きなのは僕でしょ?
他の男に…
他の男と……なんて……。
え…
なに…これ……。
頭に浮かぶその感情に、思考も体の動きも止まった。
ついでに、呼吸も数秒止まってしまった気がする。