第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
ゴールデンウィークを控えた、ある日。
今日は火曜日。定休日だ。
朝から家事を済ませて、DVDを見てゆっくり過ごしていた。
夜は修一さんと食事して、そのまま彼の家へ泊まる予定。
昼食を作り、さあ食べようとした時。
スマホの着信音が鳴る。
てっちゃんだ。
持っていた箸を置いて、電話に出る。
『あ、もしもし?今いい?』
「いいよ。今日定休日なの」
『うん、知ってる。掴まるかなーと思って電話した』
「てっちゃんは?お昼休み?」
『俺は出張で、一昨日から福岡』
「そうなんだ。大変だね。お疲れ様」
『いや、もう帰ってあとは少し会社に顔出すだけだし。それよりゴールデンウィーク中さ、平日の火曜入るだろ?店どんな感じ?』
「休みだよ」
南さんは、儲けも大事だけどしっかり休みたいっていう主義。
「俺も彼女と会いたいし~」とも言ってたな。
だから、連休の真っ只中でも定休日を挟む。
『良かった。予定なければそこでバーベキューやらね?』
「うん、大丈夫。もしかして、私に合わせてもらっちゃった感じなのかな?ごめんね」
『いや、んなことねーから。後輩が車出してくれるんだけど、梨央ちゃんちの最寄り駅まで迎え行くな』
「ありがとう」
『時間はまたLINEするから。よろしくなー!』
「はーい」
バーベキューか…。
みんなでワイワイっていう休日は、実はすごく久しぶり。
木兎さんもいるんだもんね。
賑やかになりそう。
てっちゃんとも、結婚祝いの飲み会以来。
後輩って、どんな人たちだろう。
なんだかワクワクしてきた。
カレンダーに予定を書き込んで、さあごはん、と思った時。
下腹部に違和感。
あー。
来たかも…。
トイレで確認すると、やっぱりソレだった。
修一さんと会う約束してるのに。
私は結構痛みが酷いタイプで…。
今夜の予定が、少し心配になった。