第7章 君が唄うラブソング ※【月島蛍】
「…わかりました」
「ほんと!?」
「でも、なあなあにするつもりはないんで。今までみたいな関係を続けても僕の気持ちに変化がなかったら。その時は、もうあなたとは会えません」
「わかった!」
笑顔で頷く奈々子さん。
え?ここ、笑うところ…?
この人の思考はよくわからない。
「じゃあ、改めてよろしくね。蛍くん」
「…はい」
「あと、好きだよ」
「…っ、」
飲みかけたワインで噎せそうになる。
「あの…」
「何?」
「そんな "好き" の安売りされても…」
「だって好きだもん。それに安売りじゃないよ?ちゃんといっぱい好きだから」
「はぁ…もういい」
「あ、呆れた?」
「むしろ感心します」
「え?どこに感心したの?」
「……」
ガックリ肩を落とす。
そうだ、嫌味は通じないんだった…。
その後も、奈々子さんは相変わらずニコニコ笑って嬉しそうで。
奈々子さん曰く、どうやらそれは僕と一緒にいるっていうのも大きな理由らしくて。
こんな風に女の人を笑顔にしてあげられたの、どのくらいぶりだろう。
…なんて考えてしまうくらいには、ここ数年の僕には身に覚えのない出来事だった。
「今日はありがとう。楽しかったし、蛍くんにはまた救われた」
「元カレのことですか?」
「ん…。浮気された上にあんな風に思われてたの、やっぱりちょっと悔しかった」
「……」
「でも、蛍くんが帳消しにしてくれた感じ。今、胸の中ポカポカしてる」
ゆっくり歩きながら、奈々子さんはポツリポツリ呟く。
二人で向かう先は、彼女の家。
ここから徒歩で帰れる距離だということで、送ることにした。
まあ、夜も遅いし。女の人だし。
夜道は危ないから…というだけで、他意はない。