第7章 君が唄うラブソング ※【月島蛍】
一見こういうノリで好きとか言う女、軽くて避けたいタイプ。
でも奈々子さんはそういうんじゃなくて…
自分の気持ちに正直な人なんだろうな。
嫌味は通じないし、素直だし。
だけど、それとこれとは別。
「僕たち、知り合ったばっかですよ?」
「関係ある?今知ってる蛍くんのこと、好きだなって思ったんだから。ソレが全てだよ。
ね、今度デートしよ?」
「いや…僕、彼女とかそういうの今は作る気ないんで」
「でも一週間後のことはわからないでしょ?彼女、作る気になるかもしれないじゃない?」
何かグイグイ来る!
やっぱどうしたってあの人が過るんだけど!
まさに女版木兎サン…!!
「じゃあわかった!デートは取りあえず諦めるから、また飲みに行こ?どう考えても私と付き合うのは無理って、蛍くんが思うまで。キッパリフラれたら、しつこくなんてしないから」
「……」
気のない相手に思わせ振りなことなんてしない方がいいし、するような僕でもない。
でも、計算も何もない、真っ直ぐ懐に飛び込んでくるこの感じ。
悪い人じゃないってことはわかってるだけに、珍しく言葉を選ぼうとしてる自分がいる。
とは言え、やっぱりちゃんと断った方が…
「ダメ?蛍くん…」
……チョット。
それはズルいデショ。
寂しそうに眉尻を下げて、不安げに僕の顔を覗いてくる。
どうでもいい女ならキッパリ切り捨てるところなのに、奈々子さんだと躊躇してしまう。
ていうか、調子が狂う。
そんな顔されたら、ダメなんて言いづらくなる。
いや、そもそもダメとは思っていないのか?僕は。
あー…、何なんだよ、この感じ?
あ、そうだ。
高校生の頃、たまたま会った日向の妹に遊びたいってせがまれた時みたいな感覚だ。
「忙しいから無理」なんて無下にはできず、何となく相手してあげたっけ…。
何なんですか、あなたは?
年上のクセに。
大人の対応だってちゃんとできるクセに。
そんな、甘えるみたいな言い方…。