第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
二人で改めて過ごすなんて、二十歳のあの日……フォンダン・ショコラを食べた日以来。
あの時から、何年経ってる?
てっちゃんに「老けたな」なんて思われたくなくて、少しだけ自分を塗り替えた。
どうしてこんなことを思ったのかはわからない。
日頃、修一さんを満足させられない私。
てっちゃんになら、認めてもらえるような気がしたのかもしれない。
お世辞でも褒めてくれるかも……なんて。
そしたら、てっちゃんは私が欲しい言葉をくれた。
「梨央ちゃんは綺麗なままだよ」って。
修一さんには、ダメ出しはされても褒めてもらえることなんてない。
すごく嬉しくて…。
優しさが、心に染みた。
久しぶりに、女として認めてもらえた気がした。
大人の男性になったてっちゃんは更に魅力が増して、何だか直視できない。
背が高くて足も長いから、スーツ姿もモデルさんみたいにすっごく似合ってて。
隣に並ぶのは気が引けてしまうくらい。
てっちゃんの彼女になるような人は、きっと素敵な人なんだろうな。
アルコールのせいもあって、少しフワフワする。
時計の針は、終電の時刻に向かってる。
そろそろ出ないと、終電逃しちゃう。
……てっちゃんが。
[接待早く終わった。来る?]
さっき届いた、修一さんからのLINE。
[友達と飲み終わったら行くね]
短く返信した。
私はあとどのくらい頑張れば、修一さんの理想に近づける?