第7章 君が唄うラブソング ※【月島蛍】
失恋した理由は大きく違うけれど、自分じゃダメなんだって思い知らされた時の痛み。
それは、嫌ってほどわかる。
もう忘れかけていたあの時の傷が、少しだけ疼いた気がした…。
付き合い始めてからの経緯を、順序立てて事細かく話す奈々子さん。
ほぼ初対面にも関わらず、まるで女友達にでも愚痴るような語り口だ。
その合間に、僕も奈々子さんもちょうど二杯分のアルコールを飲み干した。
三杯目に差し掛かろうかと言う時。
物語は結末を迎えたようで、奈々子さんはフゥッと大きく息を吐く。
「ありがとね、蛍くん。愚痴聞いてくれて」
「いえ別に。ほんと聞いてただけなんで」
「それが嬉しいんだよ。こうやって話すことで、気持ちの整理つくことあるもん」
「そうですか?じゃあ…よかったです」
「ねぇ。今度は蛍くんのこと教えて?」
「え?」
教えて、と言われても。
知って面白いようなこと、何もないと思うんだけど…。
「彼女はいるの?」
「いません」
「そうなんだ。だったら、次も二人で飲んで大丈夫だね!」
「…はい?」
何で僕らまた飲む流れになってんの…?
「木兎とはどんな繋がり?」
僕の返答を聞く間もなく、質問は続けられる。
「…高校の頃、バレー部の合宿で知り合って」
「そっか、蛍くんもバレーやってたんだ。あ!じゃあ、あかーしくん知ってる?」
「はい」
「面白いよねぇ、あの二人。あかーしくん、木兎に呼び出されてよく教室まで来てたなぁ」
その当時を思い出すように、奈々子さんはクスクス笑う。
「ついでに三人でお喋りして盛り上がっちゃったりしてね?たまにお昼三人で食べたりもしたなぁ。懐かしい~!」
…いや、盛り上がってたの絶対木兎さんとこの人だけデショ。
その場にいたわけでもないのに、容易に想像がつく。
それからは、お互いの仕事のこととか住んでいる場所だとか当たり障りないことを取り留めもなく話し、時間は過ぎていった。